ノーアウト三塁。

ワンアウトとなり、バッターボックスにはサトシ。
先制点の期待が高まる。

ん!?スクイズ!?
こう見えてサトシは器用な選手。
先制点が欲しいベンチは積極的に動く。
追い込まれてからの選択は“バッティングスクイズ”!
が、アウトコースのスライダーが大きく外れたためバットに当てることができず、空振り三振…。
さらに、スクイズだったため、三塁ランナーのユウキは飛び出しており、最悪の“ゲッツー”…。
もう少し内側にボールが来てくれれば間違いなく成功していたはずだが、“偶然”ボールは大きくアウトコースへ外れた…。
なんたる不運…。
ノーアウト三塁の大チャンスは無得点に終わった…。
試合の流れは、大きく北星中に傾く…。

先発のマウンドにあがったのはコウタ。
先頭打者に対しての投球。
ポンポンとストライクを取りあっという間に追い込むと、勝負球を打ち上げ、サードの後ろにフラフラっと小フライが上がる。
誰しもがファールと思ったその力のない打球は、フェアゾーンぎりぎりの芝と土部分の境目に落ち、ファールゾーンへとコロコロと転がる…。
なんという不運なヒット…。
ノーアウトランナー二塁…。
三ヶ日中が大きなピンチを迎えることになった。
送りバントでランナーを進められ、ワンアウト三塁。
先制点が欲しいのは北星中も同じ。
スクイズを決められ1点を先制され、さらにそのバントされた球をコウタがハンブルし一塁もセーフ…。
先制点を奪われた上、さらにピンチが続く…。
ボークを取られランナーは二塁へ。
その後フォアボールでワンアウト一、二塁。
ツーアウトとなった後、またもやポップフライが上がる。
「よし!打ち取った!!」
と思ったのだが、これまた飛んだコースがよく、ショートの後ろへと“ポテン”と落ちた…。
ツーアウトのためにランナーはスタートをきっており“ホームイン”…。
2点を奪われた…。
三ヶ日中はスクイズを失敗し、北星中はスクイズ成功。
この初回の攻防が試合を大きく左右することになる。
2回表の三ヶ日中の攻撃。
ワンアウトから5番のコウダイが特大の三塁打!
これをきっかけに1点を返す。
“いけるぞ!!”
失点直後の得点。まだまだいける。
なんとか立ち直りたいコウタだが制球が定まらない…。
マウンドで何度も汗を拭い、繰り返しロージンに手をやる。
いつものようなテンポで投げることができない…。
そんなコウタへ追い打ちをかけるように、相手ベンチ、応援席からコウタへの野次が飛ぶ。
しかしその声はコウタの耳には一切届いていない。
ボタボタと流れ落ちる汗を拭い、サトシの構えるミットへボールを投げる。
この時すでに高熱に襲われていた…。
四球でランナーを出すものの、バックの守りに助けられなんとかゼロに抑える。
4回が終わり依然1対2。
5回にはコウタに打順が回る。
十中八九“代打”。
良く投げた。
なんとか試合を作ることができた。
後はみんなに任せよう。
そう思っていると、なんとコウタがそのまま打席に入った。
「!」
もはや限界…。
5回裏。
ボタボタと汗を垂らしながら、コウタがマウンドへ向かった。