早いもので、コウタが高校へ入学して半年が過ぎた。
自転車で10分かけて最寄りの駅まで行き、電車に40分ほど揺られ、そこからまた自転車に乗り約30分。
ようやく学校へと着く。
「なんでまたこんな遠いところまで…」
高校で知り合った父兄の方に言われるが、三ヶ日からではどこに行ってもこれくらいはかかる。
そもそも遠かろうが、近かろうが、コウタが通う高校は、コウタ自身が決めた。
理由はわからない。
先輩がいるわけでもないし、友達と口裏を合わせたわけでもない。
中学二年の夏の時点で、甲子園の予選は今の高校を応援していた。
知り合いがいるわけでもないのに、である。
嫁さんが「もう少し考えたら?」と促すこともあったが、
一切耳を貸さなかった。
コウタの高校は過去に一度だけ甲子園に出場している。
個人的には、「どうせ野球をやるなら甲子園に出たことがある高校で」と思っていた。
というのも、どこに行こうが、コウタが高校野球で活躍できるはずがない。
強豪校だろうが、弱小校だろうが、選手として活躍することはないのだから、強い高校でやってほしい。
そんな感じの想いだった。
入部してすぐにあった『春季大会』で県大会ベスト8、
甲子園出場を懸けた『夏季大会』は2回戦で浜松工業高校に敗れたものの、
『秋季大会』では、西部大会準優勝、県大会ではベスト8へと進出した。
練習量は決して多くはないが、
“考える野球”を実践しているような感じだ。
実際、コウタは帰宅するとタブレット片手にピッチャーの映像を漁り、自分に取り入れられることを探していることが多い。
その結果(?)、投げる度にフォームが変わっていた。
内容も良かったり、悪かったり。
それでもここにきて、少しずつ目指すフォームが見えてきだした様子もある。
とにかく本人が考え、正解を自分で見つけ出すしかない。
そうそう、コウタはまだピッチャーをやっている。
少ないイニングながら、頻繁に登板の機会を与えてもらっている。
なんとかこのチャンスを活かしてもらいたいとは思うが、難しいかもしれない。
ただ、全ては本人次第。
ただただ応援するのみ、である。
そして何よりも有難かったのがチームメイト。
同級生はもちろんのこと、先輩も良い人ばかりだった。
もちろん親も。
「有難い」は「あることがむずかしい」と書く。
あることがむずかしいこととは“奇跡”を指す。
コウタが高校でも野球をやっていることは有難い。
そして、この仲間と出会えたことが何よりも“有難い”。