今回は娘が所属する「三ヶ日中学女子バレー部」の試合を観ての雑感。
三ヶ日中女子バレー部は、中体連直前の「選手権大会」で県チャンピオンになった強豪チーム。
チームの目標は「全国大会出場」。
これは夢ではない。
きっちりとした“目標”だ。
今年の県内の勢力図は、完全なる“西高東低”。
西部、特に浜松地区が強い。
選手権ではベスト4に、浜松地区から3チームが入った。
全国大会に出場するためには、県大会でベスト4に入り、その後の東海大会で3位以内に入る必要がある。
三ヶ日中は浜松地区大会を優勝し県大会に進出。
その県大会では、地区大会の決勝戦と同一カード(選手権の決勝の同カード)となったのだが、ここでは逆転負けを喫し、静岡県2位で東海大会に進んだ。
そんなチームを観ていて感じたのが“準備”の大切さ。
バレーという競技の特性もあるかもしれないが、波乱があまり“ない”。
もちろんチーム力が拮抗していれば“どっちが勝つかわからない”という展開になるが、私的見解では、波乱は“ない”。
なぜそう思わせたのか。
それは試合前の“雰囲気”から漂っていた。
だが、選手たちが緊張感に包まれているわけではない。
大きな声を出して気合いを入れている訳でもない。
もの凄いアップをする訳でもない。
にも関わらず、試合前から、相手チームとは“何か”が違っていたのだ。
それは試合が始まると程なくしてわかった。
相手チームは三ヶ日を倒そうと全力でぶつかってきていた。
大きな声で仲間を鼓舞し、ベンチと一体になってチームの結束力を強めてきていた。
「苦戦しそうだな…」
一瞬そんなことを思ったのだが、すぐさまその思いは吹き飛んだ。
三ヶ日の選手は、そんな相手の雰囲気に飲まれることもなく、淡々と笑顔で試合を進めた。
今年のチームのテーマは「揃」。
あらゆる場面で揃うことを“準備”してきた。
相手に応じ、猫の目のようにフォーメーションも変えた。
時には戦術すら変える。
それらは全て“準備”してきたこと。
さまざななタイプの相手と練習試合を行うことで、その相手を研究し、不測の事態に陥らないよう、事前にしっかりと“準備”していたのだ。
そこには「自分たちのバレーを貫く」といった類の考えなどない。
勝利のためにあらゆる手段を講じ、それを実践することこそ、三ヶ日中学女子バレー部のスタイルだった。
残念ながら全国には届かなかったが、メンバーが毎年変わる中での3年連続の東海大会進出。
“常勝”と言ってもいいチームだと思う。
このチームが実践した“準備力”は、野球でも参考になるのではないか、と思う。
例えば練習試合。
練習試合では基本的に勝敗にこだわらない。
その週に取り組んだことを、その週末に「実践できるかどうか」に重きが置かれる。
その中で「勝ちにこだわる」試合を作り、チームの現在地を図る。
大まかにはこの2本立て。
その中で通用しない相手に対し、対応策を練り、実践できるレベルになるまで練習する、といった具合だ。
すでに新チームが始動しており、あまり細かく説明するのは避けるが、とにかく先生は現状の戦力で「どうすれば勝てるか」を徹底的に考えて、日々取り組んでくれている。
野球の場合、練習試合といえ“結果”にこだわりすぎではないだろうか。
「練習試合で勝ったから本番でも勝てる」なんて保証はどこにもない。
練習試合は所詮“練習”試合なのだ。
好投手と対戦する時は、チームとしてどういうプレーをして崩すのか。
強打のチームと対戦する時は、どのような手段を用いて接戦に持ち込むのか。
相手チームが恐ろしいほどの機動力を持つチームだったらどう対処するのか。
それは日々の練習で想定し、週末の練習試合で“実戦”すべきことではないだろうか。
好投手がいるチームは難しい。
その子の調子が良ければ強豪相手にも勝ってしまうことがあり、チームとしての戦術の確認、さらには欠点を見つけ出すのが困難になる。
だからこそ、練習試合では勝敗にこだわってはいけないような気がする。
ピッチャーが試合に関わるウエイトは実に高い。
だが、そこに依存してしまっては“常勝”にはならない。
よく「自分たちの野球を貫く」的な言葉を聞くが、果たしてそれはどうなんだろうか。
せっかくの厳しい練習が無意味になってしまいそうだ。
厳しい練習を活かすためにこそ、“工夫”が必要だと思う。
その“勝つための工夫”こそが、選手たちの大きな財産になるのではないだろうか。
今年の夏、大阪桐蔭高が全国を制した。
「人材を集めてるから…」とも言われるが、今年のチームには、大会ナンバーワン投手も、大会ナンバーワンスラッガーもいなかった。
それでも優勝した。
数々のチームが「自分たちの野球」を貫き玉砕したのに対し、大阪桐蔭にはその“玉砕”感がなかったように感じた。
相手の出方を見て、試合をしているようにも思えた。
そこには「自分たちの野球を貫く」姿勢など微塵もなかったように思う。
“勝つこと”に対して、最も“工夫”したチームだったのではないだろうか。
これから佳境を迎える受験勉強も、“工夫”と“実践”で乗り切ってほしい。
この“工夫”と“実践”の考え方は、社会人になっても必要となる、大事なスキルではないだろうか。