プレッシャーと不安と!

6月29日。

この日は中体連前の最後の練習試合が行われ、城東中と東海大翔洋中と対戦。
ともにロースコアの接戦だったものの勝利。
明日から始まる本戦に向けて弾みをつける格好になった。

試合前日ということもあり、珍しく練習試合が終了し次第解散になったようで、比較的早い時間にコウタが帰ってきた。
すると珍しく「バッティングセンターに行きたい」というのでふたりで外出した。
とはいえバッティングセンターはおまけで、本当の目的は劣化した野球グッズの購入。
練習用のシャツやズボン、手袋などを購入した後、バッティングセンターへと向かった。
いつも(いつもといってもたまにだが…)行く所は常に混んでいるので、渋~いバッティングセンターへ行った。
誰もいないかと思ったのだが、バッティングゲージはそこそこ埋まっており、しばらく待つことになった。
左用のゲージから出てきたのは中学生の男子だった。
コウタより明らかに大きくガッチリしていたが、まだ高校生とはいえないあどけなさが残っていた。
そもそも高校の野球部であれば、こんなに明るい時間は練習をしているはず。
よって「中学生」という訳だ。

彼の頭も“五厘刈り”だった。

中体連に挑む三ヶ日中学野球部は1年生から3年生まで全員が“五厘刈り”。
「長くてもOK」の風潮が広がる中学野球部にあって異端な存在だ。
もちろん、五厘刈りの他校の選手を見かけることもあるが、それは極めて稀。
チーム全体が五厘刈りとなるとその希少性はさらに高まる。
野球の伝統校か、野球に並々ならぬ情熱を注げてきた子くらいしか五厘刈りはいないのだ。

バッティングゲージからでてきた彼はコウタが打ち終わるのをジッと見つめ、コウタがゲージから出るや否や入れ替わるようにゲージへと入って行った。
集中を研ぎ澄まし、体から湯気を出しながら機械が投げるボールを打つその姿は、“もう明日がない”ように見えた。


中体連は3年生最後の大会。
1回負ければその場で中学での野球は終わる。

シードの三ヶ日中学はこの日練習試合だったが、大会は今日が開幕。
すでに1/3の中学が敗退。
3年生の中学での野球生活が終わっている。


強豪中学野球部の3年生であろう彼は、不安とプレッシャーを振り払うかのように遮二無二バットを振り続けていた。
「ガシャン!」という機械音と同時に向かってくるボールを、幾度となく、力いっぱい叩いていた。

他のゲージに目をやると、ゲージは“五厘刈り”の子で埋め尽くされていた。
彼らは真剣な表情でボールを打ち続け、それを見守るお父さんは何も言わずにそれを“ジッ”と見ていた。

苦しみもがく子供を見ても、親は見守ることしかできない。
子供の傍で、“ジッ”と見ることしかできない。

手助けできることがあれば何でもする。
親はみんなそう思っている。
できれば替わってやりたい。
しかしながらやるのは子供。
プレーするのは誰でもない、子供自身だ。
であれば全ての苦しみは、子供が自分自身で乗り越えるしかないのだ。

コインが尽き駐車場へと向かうと、一台の車が入庫してきた。
その車からはバットを持った“五厘刈り”と、表情が険しいお父さんが降りてきた。


たぶん、一生懸命やってきた子ほど、プレッシャーや不安と戦っているのだと思う。
そのプレッシャーや不安を振り払うためにさらに練習をする。
きっとみんな、こういう経験を繰り返しながら成長していく。

強烈な不安やプレッシャーに押しつぶされそうになっている子は自信を持ってほしい。
その不安やプレッシャーこそが、一生懸命野球に取り組んできた証。
きっとそうなんだと思う。


明日は中体連の2回戦。
ベスト16が決まる。

明日で浜松市内の48中学の2/3にあたる32校の3年生の“中学野球”が終わる。


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