6月23日。
この日は三ヶ日中学にて練習試合が行われた。
現地に到着したのは午後1時。
目的は“強豪”丸塚中学との練習試合を観戦するためだ。
三ヶ日中学は浜松地区の第4シード。
一方の丸塚中学は第3シード。
先の県大会では準優勝を果たしている。
丸塚中のエースは小学校時代から有名な投手で、彼が投げている試合で審判をしたことがあったので、非常に印象に残っている。
中学生になって体が、特に下半身がどっしりとしていた。
いかにも「好投手」という体格に見えた。
三ヶ日中もエースが登板。
案の定、息を飲むような投手戦となった。
中体連を翌週に控え、両チームとも本番さながらの応援、プレーが続く。

コウタが目標としている“左のエース”ケンタロウくん。ずっと背番号1を守ってきたが、最近調子を崩し、ファーストでの出場が濃厚。
彼の声が、ガッツが、チームを鼓舞し続ける。
相手のミスにより三ヶ日中が先制。

県選抜大会“首位打者”のミヤタくん。観に行く度に打っている印象がある選手。
そのバットがチームを勝利へと導く。
最終回には三ヶ日中が長打を集め追加点を挙げる。
注目のシード校対決は5対0で三ヶ日中の勝利で終わった。
これで6月29日の城東中、そして東海大翔洋中との練習試合を残すのみ。
翌日から“負けたら終わり”の中体連が始まる。
思えば“あっ”という間の一年だった。
コウタが試合に出ることはほとんどない。
それでも試合から帰宅すると、先輩たちの話をいっぱいしてくれた。
打った先輩の話、横っ跳びでボールをとった先輩の話、鮮やかにバントを決めた先輩の話、エンドランを決めた先輩の話、そしてマウンドで投げる先輩の話。
とても楽しそうに、そして自慢げに先輩たちの話をしくれた。
「彼らのプレーを観てみたい」
自然とそう思った。
その後、時間が許す限り、できるだけ多くの試合に足を運んだ。
上級生の父兄に配慮してか、下級生の親が練習試合に顔を出すことはほとんどない。
例年、下級生の親は外野の遠くの方でこっそり観るらしいが、
自分はずうずうしくも、上級生の父兄の方々いる場所で一緒に観戦させてもらった。
そんな自分に対し、上級生の父兄の皆さんは普通に接してくれた。
「いるのが当たり前」のような感じで、違和感を感じることなく接してくれた。
会長さんには常に気にかけていただき、毎回声をかけていただいた。
そんな優しさが嬉しかった。
先輩たちは当初「あの人だれ?」と思っていたようだが、ほどなくしてこのオッサンが誰なのか分かってくれたようだった。
それからは見かければ大きな声で挨拶してくれた。
彼らからすれば当たり前のことかもしれないが、彼らがコウタの先輩であることに対し、とても誇らしく思えた。
最近では、コウタが先輩たちを自慢する気持ちがわかった気がしている。
そんな先輩たちの最後の大会。
同じ町で野球をしてきた彼らにとって、この大会こそが一緒に野球をできる最後の大会。

堅実なプレーでチームを引っ張るキャプテン。キャプテンだからこそ、この一年間で最も辛い思いをしたのかもしれないが、全ては将来への貴重な財産。
気負い過ぎることなく、平常心で頑張って。

この笑顔こそが今年のチームの色!
大エースへと成長したタカシくん。
マウンドにいることを、バッターとの勝負をトコトン楽しんで!
辛い時には振り返ろう!
心強い仲間がきっとそこにいるから!
思えば今年のチームは、試合の時はもちろん、辛い練習の時も笑顔が絶えることのないチームだったように思う。
その笑顔があるからそこ数々の逆境を跳ね返せたようにも思う。
その笑顔を一日でも長く!
1年生から3年生まで“五厘”の三ヶ日中学野球部の最後の戦いがいよいよ始まる。