5月10日。
この日は「レワード杯」2回戦。
対戦相手は“第1シード”の天竜中学。
中体連でシード権を獲得するためにはどうしても勝ちたい。
チーム状態は、怪我人が多く万全ではない。
それでもチームの雰囲気は良く、GW期間でチーム力は確実に上がった。
「可能性は十分ある!」
そう思って第1シードとの試合に臨んだ。
序盤は互角の展開。
「いけるぞ!」
応援席にはそんな雰囲気が漂っていた。
が、それは“わずか”な間だけだった…。
天竜中と三ヶ日中では、凡打の“質”がまるで違った…。
ボテボテのゴロやポップフライを繰り返す三ヶ日に対し、天竜の打球はとにかく鋭かった。
失点するのも“時間の問題”と思えた…。
すると4回裏。
3連打を浴び、ついに1点を先制された…。
三ヶ日がスコアリングポジションまでランナーを進めることもあるのだが、
そこに得点の予感はない…。
試合はそのまま0対1で負け、ノーシードで中体連に挑むことが確定した…。
飽き飽きするほどの接戦での敗戦だが、
今回の敗戦は今までのモノと大きく違った…。
大きな大きな“差”のある1対0…。
この先10回やっても10回負ける…。
そんな気さえしてしまうような“圧倒的”な敗戦に思えた…。
たぶん、どこのチームよりも練習した。
厳しい厳しい練習に耐え、チーム力は格段に上がり、
“どことでも戦える”
そう思っていた…。
だが“完全に”負けた…。
これ以上何をすればいいというのか…。
子供たちは先生に「バッティング練習を増やして欲しい!」と懇願したらしい。
三ヶ日中は他の中学に比べ、圧倒的に体が小さい。
バッティングの飛距離は当然、体重に比例する。
チームとして目指すカタチは“守り勝つ”野球だったはずだ。
それで、徐々にだが、結果も出始めていた。
たび重なる“強豪”との接戦での敗戦により、子供たちの気持ちが切れたかもしれない…。
“迷走”
そんな気さえする。
どうやったら勝てるのかわからない…。
子供たちはどうしても“勝ちたい”。
だから「バッティングを!」と言った。
焦る気持ちは痛いほどわかる。
だがこの試合、得点を奪われたのは“記録に残らない”ミスからだった。
ツーアウトランナー1、2塁からレフト前へ強烈なゴロが飛ぶ。
前へ突っ込みボールを捕るが、この時に“ほんのわずか”だが、ボールを“ハンブル”した。
すぐさま中継へとボールを投げるが、この際“ほんのわずかだが”中継のラインが“ズレ”た。
“守り勝つ”野球を目指していたのあれば、あってはいけないミス、与える必要がない得点だった。
翌週、高校生になった“ひとつ上”のキャプテンが練習に訪れた。
バント練習を見ていた彼は、先生にこう告げてその場を去った。
「“絶対に決めてやる”っていう雰囲気が全くないですね…」
今までの野球を貫くのか、はたまた違う野球をするのか…。
さらに言えば、彼らの“伸びしろ”がなくなっているようにも思う…。
どうすれば再び“伸びしろ”がつくれるのだろうか…。
チームが再び深い闇に入ってしまった…。
そんな気がした…。