10月12日。
新人戦に敗退した翌週、急遽練習試合が組まれた。
対戦相手は、昨年の中体連“覇者”服織中と、掛川の“強豪”桜が丘中。
両チームとも強豪なのだが、残念ながら新人戦は敗退したようで、毎年毎年選手が入れ替わる中で、常勝チームを作ることがいかに難しいかがわかるカードとなった。
一昨年は全国大会出場、昨年は県ベスト4の三ヶ日中も類にもれず、今年は例年ほどの強さがない。むしろ“谷間”と言える。
練習試合の会場となったのは掛川球場。
大会では敗退したにも関わらず、本番さながらの球場で練習試合をやらせてもらえることになった。
一試合目の相手は服織中。
三ヶ日中の攻撃で試合が始まったのだが、いきなり打線が爆発!

四番のトシヒロの三塁打などで三ヶ日中が3点を先制!

この試合、先発のマウンドにあがったのはユウキ。
練習試合では初戦で先発することが多かったコウタだが、大会で敗れた直後のこの試合、初戦のマウンドにあがったのはコウタではなく“ユウキ”だった。
(コウタでは勝てない…)
首脳陣がそう考えたことは容易に想像つく。
ユウキの本来のポジションは守備の要であるショート。
もちろん投げることもあったのだが、そのほとんどはストッパーとしての登板。
先発はたぶん初めてだと思う。
敗退を機に、チームは大きく軌道修正を図らざるを得なくなっていた…。
監督も今までとは違い、大声を張り上げ選手を鼓舞。
“ピリッ”とした緊張感の中で試合が進む。
チームが勝利に向かってひとつになっていれば、監督が大声を出すことはない。
勝利に対する執着がなく、自ら考えてプレーすることができないから、監督は大声を出した。
この監督の気持ち、果たして選手たちに伝わっているのだろうか。

そのユウキが快投を見せ、相手をゼロに抑えるピッチング。
3対0で三ヶ日中がリードし最終回へ。
チーム“初”完封なるか!という場面だったが、3点を奪われ完封ならず…。
試合は引き分けで終わった。
二試合目は桜が丘中と対戦。

先発はどうしても“結果”がほしいコウタ。
練習試合があれば初戦に登板していたが、この日は二試合目。
これは投手の“軸”でなくなったことを意味する。
“降格”だ。
実力を考えれば、これは致し方ない。
突然スピードが増すわけでも、制球が良くなるわけでも、変化球のキレが増すわけでもない。
コウタでは試合に勝てなかった。
チームにはもっといい球を投げる選手がいる。
チームとしてシフトチェンジするのは当然。
コウタとしてやるべきことはただ一つ。
“結果”を出すことだ。
どんな内容でも“0”を積み重ねることが必要。
フォアボールを出そうが、ヒットを打たれようが、エラーが出ようが、どんな状況でも“0”を積み重ねることこそがコウタのやるべきことだ。
もちろんこれは“至難の業”。
やろうと思ってできることではない。
それでもそれをやるしかコウタに道はない。
ピッチャー以外にポジションはないのだから。

力むことなく、自分のピッチングを心がけるコウタ。
試合は“投手戦”となった。

丁寧に自分のピッチングを貫くコウタ。6回までノーヒットピッチングを続け無失点。
たぶん自分でも分かっているのだと思う。
“結果”が必要だということを。
その中での好投。
それが6回まではできた。
もう1イニング。
勝ってこそ“結果”だ。
点差はわずかに1点。
最終回のマウンドへコウタが向かう。
が、先頭打者にフォアボールを与えると、続くバッターの送りバントの処理をコウタ自身がエラー。
ファーストへ大暴投を投げ、「ピッチャー交代」。
その後同点に追いつかれ、またもや引き分けとなった。
二試合とも好ゲーム。
だが“結果”が出なかった…。
監督は必死でチームを変えようとしてくれている。
果たしてそれが選手たちに伝わっているのかどうか…。
もう少し見守る必要がある。