第54話/“片想い”し続けたことへのご褒美!

7月10日。

この日は「第41回遠州少年野球大会」、通称「遠州大会」の初日。
41回目という大会の歴史もすごいが、参加チームが48という数にも驚き。
詳しいことはわからないが、選抜大会としては最大級の大会ではないだろうか。

会場は天竜川河川敷グランド。
曇りを期待したが、残念ながら“超”快晴。真夏を思わせるような炎天下の中で試合が行われることになった。

子供たちは無事試合を行うことができるだろうか。

第54話/“片想い”し続けたことへのご褒美!
立派に行進できました!

開会式が終わり、会場となる“北4”グランドへ着くと、第1試合のチームが練習を行っていた。
カードは、同じ浜名湖支部の雄踏と、磐田大会で“雨中の死闘”の果て、フレンズが破れた六郷。
(第49話/雨中の“死闘”の果てに!http://wakasan2.hamazo.tv/e2678096.html参照)
通常であれば、同じ支部の雄踏を応援する所だが、大雨の中で戦った六郷を応援している雰囲気。
組み合わせを見た時、
「もう一度、六郷と戦いたい」
と子供たちが言っていたことを思い出した。
磐田大会での激闘は子供たちの心に大切な思い出として刻まれているようだ。

しかしそこにたどり着くためには、2勝しなくてはならない。
そもそもフレンズの選抜大会での目標は“2日目進出”。
六郷と戦いたい、という子供たちの思いは、フレンズの目標と重なる。

しかし、コウタは違うチームを意識していたようだ。
そのチームは“浜松ブラッツ”。
フレンズが初戦に勝てば、2回戦で対戦する相手。
その浜松ブラッツには、以前アパートに住んでいた頃、コウタが仲良くしてもらった“シンちゃん”がいるチーム。
この二人は練習試合で偶然再会していた。
(第44話/ライバル登場!http://wakasan2.hamazo.tv/e2625814.html参照)

浜松ブラッツは、練習試合でコウヘイとコウタが投げ、大敗を喫した強豪。

それでも

「サトシが投げれば、ブラッツとも良い試合ができるはず」

コウタの言葉だが、それはこのチームに携わる人みんなの思い。
初戦にエースのサトシを温存する場合、その試合はまさに“必勝”となる。
必ず勝たなくてはならないのだ。

それぞれの思いをのせて、初戦の相手“河輪セブン”に挑む。

第1試合は六郷が勝利したようだ。

11時20分。
うだるような暑さの中、三ヶ日フレンズ対浜松河輪セブンの試合が始まった。

第54話/“片想い”し続けたことへのご褒美!
必勝の試合、マウンドにはコウタ。

初回は三者凡退で切り抜けたものの、2回には3つの四球と2つのエラーが重なり3失点。
いつも以上に制球が乱れている。

思えば、コウタがドクターヘリで運ばれたのは昨年の8月21日。
(第1話/コードブルー!http://wakasan2.hamazo.tv/e2233396.html参照)

“あの日”は暑い日だった。

あの日と同じ、うだるような暑さの中、コウタがマウンドに立っている。

「ピッチャーをやりたい」という理由で始めた野球。だが実際はただの“片想い”。
肩は弱い、制球力はない、気持ちも弱い。ただコウタにあったのは、みんなと“逆の手”でボールを投げる、ということだけ。
だが、その後のさまざまな経験により、“逆の手”で投げること以外に、もうひとつだけ武器を手にすることができた。
それは、「諦めない!」という強い気持ち。
何度も何度もピッチャーを“クビ”になりかけながらも、諦めずに想い続けてきた。

この日のマウンドは実に“重い”。

六郷ともう一度戦いたい、というチームメイトの想い。
シンちゃんのいるブラッツと戦いたい、という自分の想い。
そして、サトシに繋ぐ、というチームの想い。
全てを背負い込んでの“必勝”のマウンド。

“逆の手”と“強い気持ち”だけを持って、必ず勝たなくてはならない戦いに挑む。

3回もワンアウトから四球でランナーを背負うが牽制で刺し無失点。

4回になっても依然制球が定まらない。
四球と死球でノーアウト1、2塁とピンチを招くとパスボールで失点。

最終的には5回を“投げきり”8四死球6失点。

試合はというと、“4番”キョウタロウが6打点を挙げる活躍もあり、大量22点を奪い、5回コールド勝ち。

チームのみんながプレゼントしてくれた、コウタの“初勝利”!
諦めずに頑張ってきたコウタへの“ご褒美”だ!

“片想い”が成就するかどうかはまだまだ先の話だが、ほんの少しだけ、想いが届いたのかもしれない。

これにより、この後、2回戦で浜松ブラッツと対戦することが決まった。


試合後、昼食となったのだが、その間、北4グランドの第3試合をみんな観ていた。
対戦を熱望している六郷が都田リバースに対し、5点のビハインドを許す苦しい展開。
「六郷やばいぞ…」
完全に観戦ムード。

この試合の後、第4試合で浜松ブラッツと対戦するというのに、完全に試合に見入っている…。
試合はすでに5回裏…。

とっくにアップをしなくてはいけない時間だ…。

監督に叱られ、慌ててアップをするが、六郷の試合が気になって仕方ないのか、グランドをチラチラ観ながらアップをしている。

結局、六郷は敗退。

「うそ…、六郷負けた?」
みんな顔を見合わせながら、ヒソヒソと話している…。

その姿はもはや、ただの観客…。
プレーヤーとしての姿は微塵もない…。

“気持ち”で戦うのが今年のフレンズのカラー。

完全に気持ちが切れているようだが、この時はまだ信じていた。

「試合が始まれば“気持ち”が入るだろう」と。

午後3時を過ぎても、依然うだるような暑さ…。

2日目進出を賭けた浜松ブラッツとの戦いが間もなく始まる。


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この記事へのコメント
「ピッチャーをする」という目標に向かって、大きな怪我を克服しての
初勝利。
本当におめでとうございます♪

よかったね~コウタ君
Posted by みかりん at 2011年07月12日 15:14
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