第28話/らしくあるために

1月31日。

この日はコウタ手術。
日帰りのオペだが、全身麻酔でお腹を切るため、術後1ヶ月間は野球ができない。

2月5日の練習は休み、翌日の練習試合をコウタと共に見学に。
翌週は6年生最後の試合「お別れ大会」が行われる。
三ヶ日の5チームによる小さなトーナメントだが、最後の試合の前の最後の練習試合だけあって6年生は気合溢れるプレーを見せていた。

2月12日。

起きるとコウタが「ワンピース」を観ていた。
当然この日も練習日。

当然のように休んでいた。

その姿を観て無性に腹が立ってきた。

コウタに練習に行かない理由を尋ねると

「えっ?練習しちゃダメだってお医者さんが言ってたから」

との返答。

翌日行われる「お別れ大会」を最後に6年生は引退、コウタの代になる。
にも関わらず、“我関せず”とばかりにテレビを観ている姿が情けなかった。

自分が練習できないまでも手伝うことはあるはず。そもそも歩くことくらいはできるはずだ。
こんな自分のことしか考えないキャプテンには誰もついてくるはずがない。

練習できようができまいが、チームを思う姿をチームメイトに見せることが大切なはずだ。

(コウタも所詮こんなものか…)

過度に期待していた自分に対しても腹が立ってきた。


2月13日。

お別れ大会。
この大会終了後、退団式が行われ6年生が引退。新チームのキャプテンが正式に発表される。

練習場である東小学校に集合しアップをした後、会場である西小学校へと向かう。
みんなが集合した所で、“いつも通り”ランニングが始まる。

言い出せなかったのかコウタも一緒に走っていた。
慌てて止めさせ、歩くことに切り替えさせた。

お別れ大会は初戦で“大エース”ヒロトが完全試合達成!
2回戦でファイターズと対戦したが、ベストメンバーのファイターズに今一歩及ばず0-2の惜敗。

6年生の少年団での野球生活が終わった。
練習試合で喫した負けは1回のみ。ティーボール大会で全国大会出場のほか雄踏大会優勝など、チーム史上最強と言ってもいいほどの好成績を上げたチームだった。

試合後行われた退団式でコウタが新キャプテンに任命された。


2月16日。

この日は夜間練習が小学校の体育館で行われる。
参加者は5年生と4年生。新チームのメンバーだ。

コウタはまだ練習できないが

「練習を手伝いたい」

というので一緒に手伝いに行った。

走塁練習の際、体育館に声が響き渡っていた。

「リー、リー、リー、ゴー!」

コウタの声だ!

誰に言われたわけでもないが、みんなを盛り上げるためにひとり声を張り上げていた。
さらに走塁がおかしい子には身振り手振りで指導していた。

自分の練習はできない。しかしチームのみんなが集中力を保てるように一生懸命、練習環境をつくっていた。

この姿こそコウタらしい!!

怪我、手術を乗り越えて、さらに成長した姿がそこにはあった。

第28話/らしくあるために


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