1月22日土曜日。
この日は三ヶ日町内5チームの野球少年団対抗のマラソン大会。
3年生以下、4年生、5年生、6年生の4つのカテゴリーに分かれて順位を競い、1位の選手がいるチームに10ポイント、2位には9ポイント、以下10位までに入るとそれぞれのチームにポイントが入る形式で行われる。
コウタの所属するフレンズは昨年初の総合優勝。
コウタ自身は3年生の時に10位、昨年は6位という成績だが、昨年はインフルエンザの流行により、1チーム欠席したため、その分順位が上がった格好。全チーム参加の今年、本当の実力が試される。
自分の役割は、ゴールした選手に順位表を手渡しする役割。全学年の順位表を手元に持っていたため、ユウのお父さんと冗談で
「5年の1位と2位の順位表、先にとっとこうか?」
なんて笑いながら話していた。
3年生からマラソン大会がスタート。
フレンズは練習前にグランドを10周するのが日課となっている。アップに組み込まれているのだが、他チームに言わせると「そこまで走るチームはない」とのこと。あるかないかの真偽は確かではないが、三ヶ日の他チームよりも走っていることは確か。好成績が期待される。
3年生、4年生が終わり、いよいよ5年生がスタート。
コウタは中盤やや後ろ気味に位置しグランドを出て行った。
再びグランドに戻ってくるのは約8分後。それまでは待つしかない。
ユウは随分前から毎日走っていて、何回かその姿を見かけたことがある。コウタは(遅まきながら)11月から毎日走っている。コウタの場合は走るコースを決めてあって、その日のタイムをノートに記入するようにしている。過去の記録も一目瞭然なので、記録が上がっていく様が手に取るようにわかる。自身で記入するので続いているのかもしれない。
しかし気がかりな部分もあった。
練習前の「グランド10周」だ。
ユウは常にトップ集団で走るのだが、コウタは常に中盤。ユウはグランド半周分、コウタの前を走っている。練習前のアップだからと言えばそれまでだが、多少気になっていた。
「ユウにどこまで着いていけるか?」
がこのレースにおけるコウタの目標のように思っていた。
そんなこんなしていると、遠くに先導車の姿が見え、すぐ後ろに選手の姿が見えた。
ユウだ!
ユウが5年生の部のトップを走っていた。
それもダントツ!
後続の姿が見えない。
これは嬉しかった!
ユウのがんばりはいつも見ている。一生懸命野球に取り組む姿や、悔しがり涙する姿も見ている。チームの中で一番真摯に野球に取り組んでいる選手。だからこそ嬉しかった。
がんばっているユウは結果が出ている。同じとは言わないが、彼なりにがんばっているコウタにも結果が欲しい。日々取り組んでいることが無駄なことではないことを知って欲しい。積み重ねが大事だと言うことを身をもって理解して欲しい。さらにはチームメイト、後輩達に「努力は嘘をつかない」と言うことを見せて欲しい。
ユウがカーブに差し掛かかった時、すぐ後ろにピタリとくっつくように選手がいるのが見えた。
コウタだ!
鳥肌が立った!
ユウとコウタはデッドヒートを繰り広げ、ダントツでワンツーフィニッシュ!
1位はユウ、2位はコウタ!
順位表を渡す手が震えていた。
レース前、冗談で話していたワンツーフィニッシュ。それをこの子達は実際にやり遂げた!
そもそも、運動神経に優れた6年生、4年生に囲まれ“谷間”と言われた5年生。そのふたりが他チームの5年生を押し退け、圧倒的なワンツー。誰が想像できただろうか。
「努力は嘘をつかない」
チームメイト、後輩達にどこまで響いたかはわからない。
だが、私の心には充分すぎるほど伝わった。
この年代で打ち込めるものがあるのは素晴しい。
それがない子と比べて、どれだけ得るものが多いことか。
チームとしても総合優勝を飾った。
2位のファイターズに25ポイントもの差を付けての圧勝だった。
くしくもこのふたりは新チームのキャプテンと副キャプテン。
いいチームになるような予感がした一日だった。

いつも感動をありがとう!