第41話/見つからないチームの色…

続く2回戦は三ヶ日ジャガーズとの対戦。

同じ三ヶ日のチームということもあって勝手知れたる相手。

先月行った練習試合では圧倒的にコールド勝ち。
「勝てるんじゃないか」ムードが全体的に漂う。

ジャガーズ先行でプレイボール。

フレンズの先発はコウヘイ。

第41話/見つからないチームの色…
いつもコントロールが不安なのだが、フォアボールでランナーを出すものの2三振を奪い初回を無得点に抑える。その後もフォアボールでランナーを出すものの、圧倒的な球威でヒットを打たせない。

ジャガーズはエースが先発。
先月練習試合で戦ったのと同じピッチャー。

練習試合の際は、球威はそこそこあるものの制球に苦しみ自滅したピッチャーだ。

約1ヶ月経ったこの日、“別人”になっていた。

制球力は比べ物にならないほど良くなり、球威は格段に増していた。

初回フレンズは3塁までランナーを進めたものの無得点。

その後、両投手が好投し3回が終わって0対0。

4番キョウタロウ、サトシとタイムリーが出てフレンズが2点先制。その後コウタの“ツーランスクイズ”も決まり4点を奪うことに成功。

第41話/見つからないチームの色…
ナイスバント!

続く5回にはエイスケにタイムリーが飛び出し5-0。ここにきて圧勝ムード。

第41話/見つからないチームの色…
ナイスバッティング!※この写真の打球はファールですが、バットにボールが当たった瞬間だったので…。

コウヘイは“規定”の5回を終えて無失点、しかもノーヒットに抑える一番のナイスピッチング!

6回から交代予定だったが、ノーヒットに抑えている訳で代えずらい。

コウヘイ続投。

最初のバッターにいきなりポテンヒットを打たれると、“いつもの”コウヘイが顔を出す。
ストライクが全く入らない。

この回、2つの押し出しもあり3点を奪われ5対3。

まだ2点差ある。

最終回もコウヘイが投げる。

ピッチャーの連投が禁止された今年、核となるピッチャーがもうひとり欲しい。
チームが勝ち上がるためにはコウヘイの成長が不可欠。期待の続投だ。

しかし最終回もストライクが入らない。
スクイズで1点差に詰め寄られると、暴投が飛び出し同点にされる。

ここでたまらずピッチャー交代。

コウタとユウはそれぞれ「オレの出番か!?」と思ったようだが、マウンドに上がったのは“4年生”のコウスケ。

コウスケはこのチームのショートを守る守備の要。
4年生に要のポジションを守らせてしまう6年生は情けないが、この状態でコウスケがマウンドに上がるということは、6年生が全く信用されていないということ。

がんばれ6年生!

しかしコウスケでも悪い意流れをとめられず逆転を許してしまう。
なおもランナー2、3塁。

盛り上がる相手ベンチ。

マウンドは孤独。
そのマウンドにいるのは“4年生”。
一生懸命勇気付けようと周りが大きな声を出すが、もはや声は届かない。コウスケの目は虚ろ。

敗色ムードが漂う。

「タイムお願いします!」

選手の一人がタイムをとった。

コウタだ!

ピッチャーから一番遠くの“レフト”にいるコウタが三塁審判に駆け寄り、タイムをかけた。
コウスケの元へと走ると何やら言葉をかけ励ます。

コウスケの顔に精気が戻る。

コウスケは後続をキッチリと抑える。

7回表が終わって5対6でジャガーズが1点をリード。

フレンズに残された攻撃は最終回裏の1イニングのみ。

先頭バッターは1番のユウ。

相手ベンチは全員が立ち上がり力の限りの応援。

フレンズの声がかき消される。

しかしユウは冷静だった。
ユウは昨年からチームのレギュラー。悔しさも喜びも一学年上の先輩と共に味わってきた。さまざまな経験を積んでいる。

今ユウがやることはただひとつ。

出塁すること。

しつこくボールに食らい突くと

第41話/見つからないチームの色…
カキーン!
センター前ヒット!

チームとして最高のランナーが出た。

すかさず盗塁。

ノーアウトランナー2塁。

続くコウスケは送りバント。

ワンアウトランナー3塁。

バッターは3番のエイスケ。

現在チームの打点王。

するとエイスケは期待に答えタイムリーヒット!

同点!

今度はフレンズベンチが盛り上がる。

4番のキョウタロウも続き、
ワンアウト、ランナー2、3塁。

サヨナラのチャンス!

バッターボックスには前の試合でホームランとツーベース、この試合でタイムリーを打っているサトシ。

相手ベンチは敬遠を指示。

ワンアウト満塁。

バッターはコウヘイ。

第41話/見つからないチームの色…
思い切りブッ叩いた打球はサード真正面へ!

エイスケがホームへ突っ込む!

打球が強く、サードが少し弾く。

慌ててボールを握りバックホーム。

クロスプレー。

「セーフ!!」

主審の手が横に広がりサヨナラ勝ち!

第41話/見つからないチームの色…
勝つには勝ったがチーム状態は良くない…。
能力が高い選手が揃った昨年のチームのような戦い方。全てが個人任せ。このチームは能力の高い5年生、4年生におんぶに抱っこの状態。個人能力で戦うのであれば6年生よりも5年生、4年生のほうが上。“個”に頼っている限りチーム力は安定しない。「去年は強かったけど今年は弱い」の繰り返し。いいチームになる訳がない。

今年の6年生はそもそも“谷間”。個人能力的には昨年の6年生、今の5年生よりも明らかに劣る。

今年は今年の“色”が欲しい。


この日の夜、6年生の子供たちと一緒に食事へと出掛けた。

この際、子供たちにひとつお願いをした。

「試合が始まる前、ピンチになった時、空を見ろ」

試合が始まる前にみんなで空を見るのは心をひとつにするため。

ピンチになった時、空を見るのは心を切り替えるため。

子供たちは軽くうなずくと、すぐさま戯れだした。

(まっ、言ってもわかんないか…)

半分以上は諦め加減…。

やるのは子供たち。
いくら親が力んでもしょうがない…。

しかし“何か”をして欲しかった。
プレー以外のそんなことがチームをひとつにする。

このチームは“個”で戦うチームではない。

“チーム”で戦うチームだ!

チームで戦うチームには勝敗に関わらず“感動”がある。

相手を思いやる気持ちが芽生え、相手を思いやり、一生懸命プレーすることで人々に感動を与える。

それをフレンズの新たな伝統にして欲しい。

勝つことはもちろん大事。

しかしそれに固執しすぎても人間的な成長はない。

もっと大事なモノを、この野球という素晴しいスポーツを通じて学んで欲しいと切に願う。

しかし、子供たちは「キャッキャ、キャッキャ」言いながらじゃれあっている…。

親の想いはいつでも片想い…。


次戦は5月5日。

引佐ドリームジュニアと県大会の切符を懸けて戦う。

引佐とはジュニア大会、今年になっての練習試合と、新チームになって2回ほど戦っているが、どちらも圧倒的に惨敗…。

完全に引佐が“格上”。フレンズは2ランク下。

一体どのような戦いになるのか…。



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