第14話/完全復活まであと“わずか”!

10月3日。

この日は可美公園にて練習試合。

ワタシは仕事があったため、午後2時頃現地到着。

着くと、5年生中心のメンバーが可美のチームと試合をしていた。

ベンチ横では、サトシがキャッチボールをしていた。

「サトシ、今から投げるの?」
と聞くと、

「もう投げました」

「0点で抑えた?」

サトシは笑顔で頷いた。

どうやら完全に一皮剥けたようだ。

コウタはこの日も3塁コーチ。
練習試合とはいえ、大きな声が出ている。

試合は終始フレンズペース。

そして最終回。

驚きの“事件”が起こった!

なんとコウタがグローブを持ってライトへ向かった。

8月21日以来の守備、試合への出場だ!

これぞ“温情”采配。

もちろん、試合勘が戻っていないため守備位置も少し微妙。ちょっと深すぎるし、ラインに寄りすぎている。ベンチで観ているのと、出るのでは視界が違うからしょうがない。

結局ボールは飛んでこなかったが、“間違いなく”グランドに戻ってきた!

試合後、監督がみんなの前でコウタに激励の言葉をおくっていた。

内容は聞こえなかったが、監督の話を聞いているコウタの顔を見れば、そのことはすぐにわかった。チームメイトも笑顔でコウタの顔を覗き込んできた。

コウタは恵まれている。

チームメイトはもちろん、父兄、監督やコーチなどの指導者の皆さんも常に気をかけてくれている。時に厳しく、時に優しく、正しい方向へ導いてくれている。心のある子供に育っているのは、こうした皆さんのお陰だ。
なかなか、こんなに周りに恵まれている人間もいないのではないか。

試合が終わり、帰宅すると(案の定)、

「キャッチボールやりに行くか!」

コウタが声をかけてきた。

もちろんコッチもその気だ。

「よし行こう!」

自宅のすぐ裏にある広場へと行き、軽くキャッチボール。

「よし、じゃあちょっと打つわ!」

両腕のギブスが取れてから、まだ一度も全力でバットを振っていない。医者から注意されたからだ。本格的に「ゴー」が出るのは10月13日の予定だ。

最初は軽く“当てる程度”だったのだが、だんだんと強振し始め、最後の方は“全力”で振っていた。
今日の試合も打席に立ちたかったに違いない。でも“我慢”した。とにかく“完全復活”は10月13日の診察以降だ。

波打っていた振りが段々と鋭くなってきた。打球もライナー性の当たりが“チラホラ”ある。

「あと一発いい当たりが出たら終わるか!」

日はほとんど沈み、辺りは薄暗くなっている。ボールはほとんど見えない。

「もう一丁!」

それでもコウタは振り続けた。真剣に振り続けた。

完全復活まであと“わずか”。

一生懸命に野球に取り組む姿を再び観られるまでもあと“わずか”だ。

第14話/完全復活まであと“わずか”!
やっと試合に出られて良かった。監督もコーチも他の父兄も、みんな応援してくれてるよ!



同じカテゴリー(空飛ぶ野球少年)の記事
あとがき
あとがき(2012-04-26 21:04)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
第14話/完全復活まであと“わずか”!
    コメント(0)