第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!

10月23日。

この日は「選抜引佐大会」。

フレンズバスが会場に到着すると、丁度その横を、浜松ブラッツのメンバーが通過した。
すれ違いざまに、シンちゃんを発見したコウタが、シンちゃんと軽く手を合わせた。

何気なくそんなことをする二人を見て、“なんか良い日になりそうだな”なんて一人で思っていたのだが…。

第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!
試合前は、元気一杯!!

第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!

第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!

天候が不安視されたが、無事、開幕することができた。

第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!

フレンズは1回戦で、天竜支部の「竜川ヤングス」と対戦。

当然、全くの未知数。

果たしてどんな試合になるのか…。

試合は竜川ヤングスが先攻でプレイボール。

第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!

フレンズの先発は“もちろん”サトシ。

最近のピッチングを見ていると“凄いこと”をやりそうな雰囲気があるが、試合前にサトシが発した言葉が気になってもいた。

「なんか、思ってる程、ボールがいかない…」

慌ててホームをチェックするが、悪いところはない。
それにもかかわらず、サトシの感覚と、投じられたボールにはギャップがあったようだ…。

不安の中、マウンドに上がる…。

第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!

そんな不安をよそに、序盤は“怪投”を見せ付ける!

第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!

1回ツーアウトから“7者連続三振”!!

沸くベンチと応援席!!

しかし、サトシは納得がいかないのか、調子が悪いのか、マウンドで何度も首をひねっている。


一方、フレンズの攻撃はというと、“全く”精彩がない。

いうなれば“淡白”そのもの。

竜川ヤングスのピッチャーが良かったのもあるが、“全く”工夫がない…。

完全に“受けてたって”いる。
まさに“上から目線”…。

果たして、フレンズはいつからそんなチームになったのか…。

その原因はキャプテンにあった。

いつも通り声は出ているものの、“勝つため”の意思が全く感じられない。
要は、“必死さ”が足りないのだ。

フレンズのキャプテンは、決して“諦めない”チームの象徴であったはず。

ヘタなりに、懸命にプレーする姿を見て、チームが奮い立ち、必死にボールに食らいつく姿を見て、チームは数々の逆転劇を見せてきたはず…。

この日のフレンズのキャプテンは“普通”にプレーしていた。

1点を先制する、というよりも、チグハグなプレーで1点どまり…。

すぐさま追いつかれると、5回にはキャプテンの消極的なプレーで2点を奪われ、逆転を許す…。

完全に“負ける”展開…。

「タイムお願いします」

不穏な空気を変えようと、選手がタイムを取る…。

第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!
「タイム」を取ったのは、“なんと”5年生のキョウタロウ。ずっとレギュラーで出てくれたいた下級生が、不穏な空気をいち早く察し、タイムを取ったのだ。

選手がタイムを取るのは、“もはや”フレンズの恒例。選手が自ら考え、プレーするフレンズらしい瞬間なのだが、“それ”はいつでもコウタの役割だった。
それが、この日「タイム」を取ったのはキョウタロウ。
チームとしての成長を感じる一幕でもあるが、確実に“何か”がおかしいのだ…。

その雰囲気はチームに伝染…。

第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!
最近はずっと安定したプレーを見せていたコウヘイだが、この日はサトシの“ストライク”をポロポロ…。

第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!
めっぽう“勝負強い”はずのエイスケは、二打席連続の“見逃し”三振…。


さらに、チームを不安にさせる出来事が起こる…。

サトシが急に腕を振れなくなった…。

明らかに様子がおかしい…。


2点をリードされた5回裏…。

先頭のコウタがフォアボールを選ぶと、相手の好投手を攻め立て4点を奪い、逆転に成功。

5回が終わって5対3でフレンズがリード。

しかし、チームの雰囲気はよくないまま…。

6回表に1点を返され1点差。

第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!

第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!

6回裏には足を絡め“ダメ押し”となる2点を奪い試合を決め、7対4でフレンズが勝った…。

第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!

試合が終わると“すぐに”反省会…。

コウタ、そしてチームも最悪の出来…。

県大会以降、サトシの伸び方が“凄い”。
ひとりだけ、“遥か上”の次元でプレーしている。

そこには、コウタを必要としたサトシの姿はもうない。
“キングとナイト”の関係は、もう終わったのだ。

コウタは“それ”を感じたのかもしれない。

自分の“限界”とともに…。

何度も言うが、コウタは“ヘタ”。
しかし、それを充分すぎるほど補う“強い気持ち”と、圧倒的な“キャプテンシー”があったはず。

誤解を承知で言うが、コウタがいなければ、このチームの躍進はなかった。
“奇跡のチーム”とも言える、今年のフレンズの象徴は“間違いなく”コウタだった。

実際に活躍するのは、ユウであったり、サトシであったり、エイスケであったり、コウヘイであったり、キョウタロウであったり、コウスケであったりし、直接コウタが活躍することは“ほぼ”ない。

しかし、コウタの発する“勝つ意思”がチームに伝染し、数々の“奇跡”的な逆転劇を見せてきたのではないか。

先日、町内の別のチームの監督が、フレンズのコーチにこんな話をしているのを耳にした。
「今年のフレンズはキャプテンが本当にいいね。あんなキャプテンらしいキャプテン、なかなかいないね」

そんなことを言われたキャプテンの姿は、この日はどこにもなかった…。

確かに野球も“少し”は上手くなったかもしれない。

しかし、コウタに求められているのは、コウタの野球は、その身震いする程の“勝つための意思”。

コウタの少年野球は、まもなく終わる。

親としての願いはただひとつ。

「最後まで、最後まで自分の野球を貫いて欲しい」


試合後、追い討ちをかけるように、サトシの“肘痛”が判明…。
ただの筋肉痛の可能性もあるが、チーム方針としては“絶対”に無理をさせない。

となれば、来週は登板回避の可能性が高い。

完全なるサトシの“ワンマンチーム”となったフレンズ…。
コウタが“強い意志”を見せ、再び“チームとして”の輝きを取り戻せるか。

勝敗以上に大切な“何か”を取り戻せるかどうかはコウタに懸かっている。

再び、あの“身震いするほど”の試合を取り戻せるか…。


試合から戻り、片付けを終え家に帰ると、先に帰ったはずのコウタの姿がなかった。
帰るとすぐにグローブを持って、すぐ裏の広場へと出掛けたという。
ビール片手に様子を見にいくと、フレンズの下級生の子がバッティング練習をしていた。
コウタはその子が打つ球を拾っていた。
拾っていたというか、懸命にそのボールを追っていた。
ただただ夢中にボールを追っていた。

思えば、コウタの野球はこの広場から始まった。

初めてキャッチボールをしたのも、この広場。
初めてボールを打ったのもこの広場。
フライが捕れるようになったのも、ルールを覚えたのもこの広場だ。

私が子供の頃は近所の子たちがみんな集まり、ここで野球をするのが当たり前だったが、子供が減り、公民館となったこの広場は、近所のお宅の駐車場として使われることが多くなっていた。たまに覗いても、子供の姿はどこにもなかった。
しかし、3、4年前から、“再び”子供たちが集まり、野球をするようになった。その中心にいたのは、紛れもなく“コウタ”だった。
するといつしか停まっていた車もなくなっていた。

まさにこの広場は、コウタの野球の“原点”。
そんな場所で、懸命にボールを追っていた。

その姿は、まるで“何か”を取り戻そうとするかのように見えた。

「一言言わなければ…」
と思っていたのだが、このコウタの姿を見てヤメた。

きっと、自分でも感じているはず。

“何か”が薄れていることを…。


来週は土曜日が「引佐大会」の2回戦、日曜日は“最後”の支部チャンピオンを決める「秋季大会」が開幕する。



同じカテゴリー(空飛ぶ野球少年)の記事
あとがき
あとがき(2012-04-26 21:04)

この記事へのコメント
一回戦突破おめでとう。

ブラッツは残念ながら一回戦で敗退してしまいました。

こうたくんと進之介のそんな光景を見たかったけど、私は将弥の西部大会に行っていました。

ブラッツとほぼ同じ時間に試合がはじまり、延長延長・・最後は特別延長でなんとか勝利を手にすることができました。

このいなさ大会で六年生の大きな大会も終わり。。。
試合会場でこうたくんに会える機会は今年はもうないのかなと思うととてもさみしいです。。。、

フレンズ頑張れ!
Posted by しんのすけ母 at 2011年10月25日 06:17
一生懸命、キャプテンとしてチームをひっぱてきて・・・
ちょっと息切れしちゃったのかな~?

でも、家に帰ってからの姿をみると大丈夫ですよ。
自分でわかってる。

サトシ君の肘痛は心配ですが、きっとコウタ君がチームを
奮い立たせていい試合になりますよ!
Posted by みかりん at 2011年10月25日 06:35
しんのすけ母さん

ブラッツ負けちゃったのか…。

残念…。


フレンズは、引佐大会の後、三島大会があります…。
(また三島…)

ブラッツは終わりですか…。

残念です…。
(シンちゃんと一緒に写真撮っとけば良かった…)


中学野球、三ヶ日もなんとか初戦突破できたようです!
中学はサトシのお兄ちゃんがサードで出ています!

シンちゃんも中学で野球をやるんでしょうね。
(コウタには怖くて聞けていません…)

またお会いできる日を楽しみにしています!
Posted by ワカさん at 2011年10月25日 13:50
みかりんさん

気持ちはなんとなくわかるんですよね。

終わりが近づき、目標を持ちにくくなっていると思います。

だからこそ、最後まで、しっかり、チームを引っ張っていって欲しいです。

フレンズはいつでも“チャレンジャー”!

おごることなく、常に相手に挑んでいって欲しいものです。
Posted by ワカさん at 2011年10月25日 13:58
肘痛心配ですね。

家の次男も今日病院に行きましたが、肩の関節部軟骨離脱でした。

成長期の投げすぎで起こります。

肩と肘、同時には痛めないようですが・・・

いずれ肘にもくるでしょうと言われました。

一度、診察されることをお勧めします。

今ではありません、将来ある子供たちですから・・・

うちにも6年にも見習わせたい、息子さんはいいキャプテンですよ。
Posted by ケロロ少佐ケロロ少佐 at 2011年10月25日 19:37
そうでしたか…。

フレンズも、違和感があれば、すぐに言えるような環境づくりをしていく必要がありますね…。

サトシはとにかく“先”があるので、無理をさせないよう、注意していきたいと思います。

今度、病院について詳しく教えてください。
Posted by ワカさん at 2011年10月26日 15:01
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
第75話/勝敗以上に大切な“何か”を失った日!
    コメント(6)