7月30日。
この日は「第31回島田ライオンズクラブ旗争奪学童選抜軟式野球大会」。※通称島田大会。
島田球場を中心に、32チームが優勝目指して熱戦を繰り広げる。
この日の島田の天気は、「曇りのち雨、一時雷雨」とあったが、いたって快晴。
三ヶ日フレンズは「島田第2球場」での第1試合、対戦相手は、福田支部の「新田野球少年団」。
去年、今年と全ての大会で県大会に進出している強豪中の強豪。
この辺のクラスになると、フレンズでは全く歯が立たない。
という訳で、この日の夜は「県大会出場祝勝会」が予定されている。
チームの子供たちと首脳陣、そして親たちで「すたみな太郎」に行くことになっているのだ。
仮に初戦に勝つと、翌日に2回戦が行われるため、こんなことはしないのだが、とにかく相手が相手。
組み合わせが決まった時点で“宴会”の予定を入れたのだ。
「負けるに違いない」
という理由で…。
しかし大会直前に情報が入る。
「JAの県大会が同日に行われるため、新田は5年生中心で島田大会に参加する…」
新田は今年のジュニア大会でも県大会出場を決めているわけで、5年生以下でも強いのだが、フレンズはベストメンバー(ベストとはいえ“カタワ”の6年生が5人で、他は5年生と4年生だが…)。さらに、“まぐれ”とはいえ、県大会に出場するチーム。いくらなんでも“ジュニア”のチームに負けてはいけない。
という訳で、“負けるつもり”だった試合が、突如、“絶対に負けられない”試合になってしまった。
実は、先週末、三ヶ日スターズと合同練習を行った。
三ヶ日スターズのある大崎小学校が、来年度から三ヶ日フレンズのある三ヶ日東小学校に統廃合される。
その関係で三ヶ日スターズは今年度で解散し、今のメンバーは三ヶ日フレンズに吸収されることになっている。※三ヶ日の少年野球チームは、ひとつの小学校でひとつのチームが原則とおり、小学校区ごとに所属するチームが決まっているため、チームを選ぶことができない。
来年からのチーム編成を検討するため、定期的に合同練習が行われることになっているのだ。
その合同練習の最後に、6年生対5年生以下の紅白戦が行われた。
フレンズの6年生5人に、スターズの6年生が4人加わり、きっちり9人。
対する5年生以下チームには、フレンズの“4番”、“ショート”、さらにスターズの“エース”がいる。
一見すると5年生以下の方が圧倒的に強そうだった。
結果は6年生チームが勝ったのだが、6年生のサトシが5年生の主軸相手に魅せたピッチングは圧巻。今まで見たことのないようなそのピッチングは、「オレが上だ!」と見せつけているような鬼気迫るような投球だった。
この日の対戦相手も、“超強豪”とはいえ、5年生以下で構成されたチーム。先週見せたようなサトシのピッチングがあれば勝てる可能性は高まる。
しかし試合直前
「今日は打たせてとれ、と言われてます」
とサトシ。
この微妙な状況の試合は、果たしてどうなるのか…。
さらに、夜の“宴会”は“飲みすぎ厳禁!”となるのか…。
フレンズが先攻でプレイボール!

なんと“始球式”が!ユウしか味わえない貴重な経験!
あっと言う間に三者凡退…。
全然試合に入れていない印象…。

フレンズのマウンドは当然“エース”のサトシ!前回の登板は2回で5四死球の大乱調。それもあっての「打たせてとれ」の指示。どこまでそのピッチングができるか。
そんなことを考えれる前に、いきなりデッドボール…。

さらに、牽制時にいきなり「ボーク!」を宣告され、ノーアウトランナー2塁に…。
送りバントでランナーが3塁へと進むと、ライト前にヒットを打たれ、いきなりの失点…。
次の打者には1塁線を破るスリーベースヒットを打たれピンチは続くが、後続を抑えこの回は1失点のみ。
1回が終わって0対1で新田がリード。
1回の攻防ではっきりしたのが、新田の守備の堅さ。ピッチャーは常にストライクを先行させ、内野手はみんな軽快。バッティングは徹底して“叩きつける”。
ひと目で強いチームだとはっきり分かる。
ただ、5年生。やっぱり負けてはいけない。
2回のフレンズの攻撃は4番“5年生”のキョウタロウから。
そのキョウタロウがヒットで出塁。

続くバッターは、下級生になめられることが一番嫌い(たぶん)なサトシ。

思い切りぶっ叩いた打球は外野を遥かに超え、転々と転がる。巨体を揺らして走るが、3塁止まり。
キョウタロウがホームインし同点。
コウヘイが倒れワンアウト。

バッターボックスにはコウタ。
この場面、何をやるのかははっきりしている。

スクイズ!もはや職人!!
逆転に成功!

2回裏、3回裏と三者凡退に抑えるサトシ。“打たせてとる”ピッチングが上手くいっている印象。
しかし4回裏、逆転を許す。
ノーアウトからヒットでランナーを許し、次の打者はセカンドゴロ。
「ゲッツー!」
と思ったが、結果はフィルダースチョイスとなり、ノーアウト1、2塁。
バントで送られ、ワンアウト2、3塁のピンチ。
サトシが徐々に「打たせてとる」を忘れ始める…。
次の打者を三振に仕留めツーアウト。
こうなったら、当然、無失点で切り抜けたい…。
しかし力んだサトシが“ワイルドピッチ”…。
同点。
さらに、相手打者が叩きつけた打球がキョウタロウの頭の上を抜けタイムリーヒット…。
逆転。
4回を終わって2対3で新田がリード。
流れは完全に新田へ。
常識的に言えば“負ける”展開…。
だが、それが関係ないのが今年のフレンズ。

この回先頭のコウタがヒットで出塁!
その後、ボークとパスボールで3塁へと進むが、8番、9番が倒れツーアウト…。
通常であれば、この回は無得点で終わる…。
しかし、何度も言うが“それ”が関係ないのが今年のフレンズ。
バッターボックスには1番“副キャプテン”のユウ。
こういう場面でユウは必ず“打つ”!
それはもはや“通常”。何も心配せずにユウの打席を眺める。

そしてユウは実際に“打つ”!右中間を破るタイムリーツーベース!
コウスケのヒットで続き、バッターボックスには3番のエイスケ。

この試合でも“当たり前”のように打つ!特大のタイムリースリーベースヒット!

結局この回は4点を挙げ逆転に成功!それにしても“渋い”得点版。担当の方、ご苦労様です。
その裏、1点を返され6対4でフレンズリード。
しかし、一回打ち出したフレンズ打線はもう止まらない。

サトシがこの日3本目となるヒットで出塁!

ノーアウト1、2塁からコウタの“職人技”が炸裂し、ワンアウト2、3塁とチャンスを広げる。
結局、この回3点を追加し試合を決定付ける。
6回を終わって9対4。
最終回。
この回はキョウタロウが炸裂!

フルスイングした打球は、レフトの遥か頭上を超える大飛球!

楽々スリーベース!
サトシの特大のセンターフライでタッチアップ。
1点を追加。
続くコウヘイが四球で出塁する。

盗塁! ズッコケそうになったものの、セーフ!
最終回の裏は多少バタついたもののゲームセット!
10対7でフレンズが勝利!
絶対に“負けられない”戦いで勝利することができた。
序盤は集中力を欠き、声もほとんどなかった。
決して褒められた試合ではない。
しかししっかりと逆転することができた。
ほんの数ヶ月前までは、このクラス(投手の制球と守備が良いチーム)とやれば絶対に負けていた。
フォアボールとエラーでしか得点が奪えなかったからだ。
実に大雑把だが、明らかに前よりは強くなっている。
結果以外にも収穫があった。
それは試合に出ている5年生。
6年生に比べると、声がなかった5年生だが、この日は声が出ていた。
その質はともかく、声が出ていたことは収穫。
※ただ、ベンチは最後まで声がなかったが…。
これで翌日も試合…。
夜の“宴会”で、ほどほどで飲むのを抑えられるか…。
新たな戦いを覚悟しなくてはならなくなった…。
第2試合目がはじまってすぐ、雨が降り出した。
落雷も聞こえる。
試合は中断。
フレンズは帰路につくことになった。
バスは河川敷に駐車してある。
第2球場から河川敷までは、島田球場を約半周して堤防を越えて辿り着く。
その間、さまざまなチームが雨をしのぐために、球場の周りに集まっていた。
「こんにちは!」
フレンズのキャプテンは、すれ違うチームに大きな声で挨拶をしていた。
「お前らもちゃんと挨拶しろ!」
キャプテンに促され、フレンズの子たちは、すれ違うチーム全てに大きな声で挨拶をしながら駐車場へ向かった。
なんかとても誇らしい気持ちになった。
野球は全く上手くない。
試合中は“ヤジ将軍”。
しかし、グランドを離れればしっかりと挨拶ができる。
子供たちは勝つことを目的に野球をしている。
しかし、その中に、勝つ事以上に大事なものがたくさん隠れている。
それに気付かない子は多い。
この子たちがこれらの“大事なもの”気付いているかどうかは分からない。
ただ、大人が見て大事だと思われることをしっかりとやっている。
雨は激しくなり、落雷が近くであったようだが、心は実に晴れやか。
これでいいのだ。
三ヶ日へ着くと、大会延期の連絡が!
「やった!」
この日の夜は子供たちを一緒に祝勝会。
翌日の練習は、スーパージュニアの大会が近いため、5年生以上は休み。
4年生以下の父兄に練習はお願いし、“飲んじゃう”ことにした。
祝勝会の会場は「すたみな太郎」。
50人くらいの大所帯だが、当然他のお客さんもいる。
そんな中でも、チームメイトに挨拶をするコウタは、店中に響き渡るような大きな声で、お礼の言葉を言っていた。
それは、こっちが恥ずかしくなるほど大きな声。2列ずれている席のおじさんが振り返るほど大きな声。
しかし、コウタはみんなにしっかりと感謝の気持ちを伝えたかったのだ。
「みんながいてのフレンズです!県大会でも一緒に戦おう!」
改めて思う。
ホントにあなたは素晴しいキャプテンです!
7月31日。
夕方まで二日酔いだったことは言うまでもない…。