11月27日。
この日は「西部オールスター」。
静岡県西部の12支部が選抜チームを結成し、最強の支部を決める大会だ。
今年はわれわれ浜名湖支部が担当となっているうえ、メイン会場が三ヶ日(町民グランド、三ヶ日中学校グランド、西小学校グランド、三ヶ日高校グランドの4会場)になったこともあり、三ヶ日の5チームの父兄が中心になって準備・運営することになる。
フレンズの担当はメイン会場となる“三ヶ日町民グランド”。
通常のグランド整備にくわえ、本部設営・開会式の準備などを手分けして行った。
加えて、会場の責任者に任命されてしまった。
いつもブログにコメントをいただける方々にお会いし、お礼を言うつもりだったが、これで難しくなった…。
オールスターは12チームを4つのブロックに分け、3チームがリーグ戦を行い、そのリーグの1位になったチームが翌週のトーナメントへと進むことになる。
受け持つことになった町民グランドで試合を行うのは、菊川と掛川、そしてサトシとコウヘイがいる浜名湖A。
浜名湖支部は2チームが参加しているが、サトシがいる浜名湖A、そして優勝候補の呼び声が高い掛川がいる会場だったのは幸いだった。
試合はというと、菊川には勝ったものの、掛川には完敗し、リーグ戦で敗退した。
そんな中でもサトシは2試合を通じて“4番”を任された。しかも数少ない“フル”出場。
誇らしい気持ちになったのは言うまでもない。
一方、コウタはというと、同様にメンバー落ちしたエイスケと、5年生のキョウタロウとキョウスケ、4年生のコウスケを引き連れ“自転車”でやって来る、と言っていた。町民グランドは“学区外”となるため、自転車で来てもいいのかは分からないが、自転車で来ると言っていた。
コウタたちを見つけたのは、浜名湖Aの初戦となる菊川戦。観客席ではなく、グランドの隅っこでかたまっていた。
「アイツら何やってんだ…」。
遠巻きに見たコウタたちは、とても試合を観ているようには思えなかった。
イニングの合間に持ち場を離れ、コウタたちの傍へと向かった。
近づいて分かったのだが、みんな真剣に試合を観ていた。
「あの選手、チョ~凄くない?」
「あんな球、絶対当たらない…」
出てくる言葉は、“差”を感じているかのような言葉ばかりだった。
少しだけ寂しい気持ちになりそのまま戻ろうとしたが、みんなに声を掛けてから戻った。
下級生はともかく、“同級生”の凄まじいプレーを目の当たりにしたコウタとエイスケは、とりわけ“差”を感じているように見えた。
中学でやるのは難しい、って思ったかな、なんて勝手に思ったりもした。
掛川との試合が終わる頃になると、コウタたちの姿はどこにもなかった…。
片付けを終え、翌週の打ち合わせをし、暗くなった5時過ぎに帰宅すると、コウタは“まだ”いなかったのだが、心配する前に“元気よく”帰ってきた。
「遅かったね。どこ行ってたの?」
恐る恐るコウタに尋ねた。
聞いてはみたものの答えはなんとなく分かっていた。
「○○くん家で遊んでた」と言うだろうと思っていた。
なぜなら、圧倒的な“差”を感じて帰ったと思っていたからだ。
“差”を感じた子は、そこが“限界”だと思ってしまう。
限界を感じれば、“ソレ”に興味がなくなる。
今日のことであれば、“ソレ”は野球だ。
興味が失せた野球は観たくもない。
だから帰ったのだと思っていた。
しかし、コウタの答えは意外なモノだった。
「公民館で野球やってた」
「!」
聞けば、試合を観ているうちに、どうしても野球をやりたくなり、「明るいうちに野球をやろう」ということになったらしい。
“差”を感じた時に諦めてしまう子、“差”を感じた時に“自分もなりたい”と思う子。
これらの意識には大きな差があるように思えるが、ほんのわずかな、紙一重の差なんだと思う。
それを分けるのは、自分の意志の強さや、目標を達成するために意欲だったりすると思うが、コウタの場合は、もっと単純な意識、「野球が好き」ということだけのような気がする。ヘタだが、野球が好きなのだ。
もうすぐコウタの野球は終わる。
「野球を続ける」と約束した期限は小学校が終わるまで。
中学で野球をする契約は結んでいない。
中学生になれば、コウタは好きなスポーツを選ぶことができる。
コウタが悩んでいるのは「自分にできるだろうか」という技術の“差”を感じてのこと。
当然、なかなか上達しない自分に“限界”も感じているのかもしれない。
だが、野球を嫌いになれないような気がする。
一番大事なのは技術ではない。
一番大事なのは“野球が好き”という気持ちだ。
コウタが野球をする姿は小学校の間だけ観れればいい、と思っていた。
だが、今は“もっと”観ていたい、と思うようになっている。
コウタが決断を下す前に問いたいと思う。
「野球、好きか!?」
と。