第94話/巨大な“うねり”の中で!
やや収まったとはいえ、まだまだ風が強く、寒い。
その影響か、はたまた会場の“異様”な雰囲気のせいかわからないが、いつもと声の出方が違う。
迫力がない。
いつもなら、ピッチャーと共に打者に向かっていくように声を出すのだが、この時は完全に“とりあえず”声を出しているだけ。
「おーい、おーい」という、心のない声が響く。
コウタは依然寒そう…。
レフトのエイスケにいたってはこんな感じ…。
全体的に集中できていない雰囲気が蔓延している。
得点を取った後のイニング。
この回だけは“絶対に”点を取られてはいけない。
周りの状況を観るとサトシ頼み。
追い込んだものの、先頭バッターにヒットを許す…。
ノーアウトランナー1塁。
バッテリーの“ちょっとした”ミスを突かれ2塁に進まれる…。
ノーアウトランナー2塁。
ピンチ!
湧き上がるファイターズベンチ!
観客席もこれに呼応するかのように沸く。
誰がどう観ても流れはファイターズ…。
得点を奪った後のイニング。
この回の失点だけは“絶対に”避けたい。
無失点で切り抜ければ、流れは確実にフレンズのモノになり、勝利が“グッ”と近づく。
まさに勝負の“分かれ目”。
しかし、ノリノリのファイターズにこの男が立ちはだかる。
サトシだ!
サトシだけは集中力が切れる様子もなく、鬼気迫るピッチングを披露!
衝撃の“2者連続”三振!
ツーアウトランナー2塁。
次の打者の打球が1、2塁間へ転がる。
やや強い打球だが、余裕でセカンドの守備範囲。
「よし!切り抜けた!」
と思った瞬間、ボールはライトへと転がっていた…。
それでもファーストへ投げれば間に合うタイミングだったが、投げられず1塁セーフ。
その間にセカンドランナーがホームイン…。
同点に追いつかれた…。
完全なる準備不足…。
集中できていない上、ツーアウトになり安堵感が出ていた…。
間違いなく、声を掛け合うべきだった…。
ファイターズは完全に“押せ押せ”ムード!
ベンチも、応援席も“押せ押せ”だ。
2盗、3盗と決められ、ツーアウト3塁となったが、次の打者をショートゴロに仕留め、なんとか1失点。
しかし試合は、ファイターズに流れを奪われたうえに、“ふりだし”に戻ってしまった…。
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