三ヶ日中学校女子バレー部はこれまで3季連続で「東海大会出場」を果たしている、いわゆる強豪チーム。
だがそれは昨季までの話。
昨季のチームはこの3年間で“最強”で、県大会優勝も経験。
目標は「全国大会出場」だった。
だが、その目標も“あと一歩”のところで逃してしまった。
そんなチームをうけて、新チームは発足。
希望に満ち溢れて走り出すはずの新チームだが、サポートはずの父兄には憔悴感が漂っていた。
それもそのはず。
3年生が卒部し、部員は“たった”6人。
2年生が4人、1年生が2人の“たった”6人しかいない。
しかもみんながみんな上手いわけではない。
先輩たちに比べれば、その能力は大きく下回っている。
昨年が“最後”のチャンスだったのだ。
「何も起こるはずがない…」
さらに、バレーボールは6人がコートに立っていないと大会に出場できないらしく、
6人しかいない時点で、怪我もできなければ、病気もできない、ということを意味していた。
大会で勝つ以前に、大会に出場できるかどうかさえ危うい状況になってしまっていた…。
そんな中ただ一人、顧問の先生だけは違うことをみんなの前で言った。
「今年も勝負します!」
低迷していた三ヶ日中を蘇らせた先生の言葉。
おべんちゃらなど一切言わない先生の言葉だけに心が躍った。
ただそれは、動いたかどうかさえ分からないほど、ほんの少しだけだったが…。
平成26年8月16日。
新チーム始動。
子供たちが新たに立てた目標は「東海大会出場」。
三ヶ日中学女子バレー部は、彼女たちが入部したその瞬間から、ずっと強豪チームだった。
先輩たちは皆、当たり前のように「東海大会」に出場していた。
チームの中に“勝者のメンタリティ”がうごめいていた。
だから彼女たち6人の目標も、“当たり前”のように、大きな模造紙に「東海大会出場」と書き込み、体育館に張った。
彼女たちからすれば、これは夢ではない。
明確な“目標”だったのだ。
彼女たちは知っていた。
東海大会に行くためには、厳しく辛い練習が待っていることを。
彼女たちは見ていた。
その練習を先輩たちが乗り越えて、目標を達成してきた姿を。
だから彼女たちは知っていた。
厳しい練習の先にこそ結果があるということを。
お盆休みが明け、練習をする間もなく、いきなりの練習試合。
先生からすれば“現状把握”が目的だろうが、
父兄からすれば“今年もイケる!”といった手応えがほしかった。
が、試合は11試合行い、6勝5敗。
桜が丘中、島田第一中という、県内のチームにも負けた。
東海大会に出場するには、県大会で「ベスト4」以上の成績を残す必要がある。
やはり、「今年は難しい…」。
この試合を見た全ての人がそう思ったことだろう…。
8月20日・21日も練習試合。
浜松のチームが多く参加していたのだが、この二日間も、勝ったり負けたりの試合が続いた。
先生はさまざまなことを試していた。
試行錯誤しているのは誰の目にも明らかだった。
この日は、新居中、浜松東部中、菊川西中に負けた…。
この間、県内のチームで敗れたのは5チームにものぼる。
当然、手応えなどどこにもない…。
県大会の上位4チーム以上のみが出場できる「東海大会」など、夢の、また夢…。
この時はそう思えた。