いま、自分にできること。

ワカさん

2012年10月16日 13:23

10月13日土曜日。

この日は三ヶ日中学校にて練習試合。

三ヶ日での試合となれば行かない訳には行かない。
例え前日に3時過ぎまで呑んでいたとしても…。
さらに4時からサッカーを観ていたとしても…。

とはいえ、家を出るまでにダラダラしてしまい、三ヶ日中学校に着いた頃には練習試合の1試合目が終わりかけていた。

試合終了後、続けざまに2試合目が開始。
2試合目は一年生数人がスタメン出場。

サトシは5番、キャッチャーで出場した。
怪我あけのためスローイング、バッティングは精彩を欠いたが、配球を考えピッチャーをリードし、安定したキャッチングを魅せていた。

コウタを探すためベンチに目をやったが、そこにコウタの姿はない。
SBO、審判をしているかと思いグランドに目をやったがいない。

(一体どこにいるんだ…)

コウタの居場所がつかめないまま試合を観る。

両チームともピッチャーが良く、投手戦の模様。
どっちのピッチャーも体が大きく、とにかく球が速い。

(とてもこんな試合じゃ、出番ないな…)

先週1イニングを投げさせてもらったという話を聞き、多少は期待していたが、とてもとてもコウタが投げさせてもらえるような試合ではない。
自軍だけではなく、相手チームにも失礼だ。
なぜなら試合をぶっ壊す可能性が高いからだ。

そんなことを思っていたら、「はっ!」とした。

グランド上、ベンチはくまなく見た。
しかし、一箇所だけ見ていない場所があった。

ブルペンだ。

恐る恐るブルペンに目をやる…。

(いた!)

ガリガリで背が小さいサウスポーが投球練習をしているではないか。

(おいおい…)

それでも出番はないと思っていた。
なぜなら、試合があまりにも緊迫している。

試合は4回が終了し、0対2で三ヶ日中がリードを許す展開。

5回表。

マウンドには、ガリガリで背が小さいサウスポーがあがっていた。

マウンドにあがるとその小ささは際立つ。
周りの選手が大きいからだ。

投球練習を始めたが、全く制球が定まらない…。
サトシが大きな体を伸ばしてボールを止める…。

帰りたくなるほどの不安に襲われた。

これは上級生の練習試合。
「西部大会」に向けた“最後”の練習試合なのだ。
試合は接戦。
下級生が試合を潰す訳にはいかない。


「プレイ!」

おびただしい緊張感の中、試合が再開。


「ピッチャーコウタ!キャッチャーサトシ!」この二人がバッテリーを組む試合をこんなに早い段階で観られるとは。

初球ストライク!

遅すぎて相手バッターが戸惑っている。

2球目を引っ張りファール。

ファール、ボールと続き6球目。
ファールチップがサトシのミットに吸い込まれ三振。

ワンアウト!

次のバッターにはフォアボールを与え、ワンアウトランナー一塁。

次のバッターの打球はボテボテのサードゴロだったが、サードがフィルダースチョイスで、ワンアウト1、2塁…。

ピンチ…。

次のバッターの時、ダブルスチール!

これを手が痛いはずのサトシが刺してくれ、ツーアウトに!

そして最後はピッチャーフライに仕留めスリーアウトチェンジ!

ピンチは招いたものの、なんとか無失点で戻ってきた。

試合を壊さずに“ほっ”としたものの、成長しているコウタの姿を観ることができた。

マウンドで投げるコウタを観るのは小学校以来。
約7ヶ月ぶりだ。

普段キャッチボールをしても成長を感じたことはない。

しかし、マウンドで冷静にボールを投げるその姿は“明らかに”小学校の時とは違っていた。

球は遅い。

制球も甘い。

だが、確実に成長していた。

コウタを観ていてイチローの言葉を思い出した。

「いま自分にできること。頑張ればできそうなこと。そういう目標を積み重ねていかないと、遠くの大きな目標は近づいてこない。(イチロー)」


コウタはたぶん、目標を積み重ねている。

そう思わせてくれるマウンドだった。

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